現在、木ギャラリーで3ヶ月にわたり開催中の『白鳥絵美展 | Emi Shiratori Exhibition 2025』は、クラシックバレエやサーフィン、スケートボードなど、“動き”の中に宿るリズムや心地よさを独自のパターンで描き出した作品展です。バレエの優雅な一瞬、海の力強い波、軽やかなスケートの動き。それぞれがグラフィックとして再構築され、観る人に「心地よいリズム」を感じさせます。
展示されている全8作品は、木ギャラリーの空間を意識してセレクトされました。天井の高さや奥行きを生かした大作をはじめ、夏にふさわしい作品が並び、白鳥絵美さんの世界観を存分に味わえる構成となっています。
クラシックな芸術と現代的なデジタル手法が融合した作品は、観る人に新鮮な驚きと、どこか懐かしい安らぎを与えてくれるでしょう。
今回は、白鳥絵美さんへのインタビューを通して、展示開催の経緯やニセコとのご縁、作品づくりに込められた思いや背景に迫ります。作品をより深く堪能できる手がかりとして、ぜひご覧ください。
今回、木ギャラリーで展示会を行うことになった経緯や、ニセコとのつながりについて教えていただけますか?
はじめに、ニセコのつながりですが、2008年に東山のヒルトンニセコビレッジがオープンした際に、小作品やグッズを販売しないかとお声がけいただいたところから始まりました。その後、The Green Leaf Niseko Village のリニューアルオープンにあたり、アーティストとして参加させていただいたりと、ここ十数年、ご縁をいただいております。そんな中で、今年、木ニセコの担当の方からお声がけいただき、ヒラフエリアでは初の展示会を開催することができました。
展示中の8作品は、どのような視点やコンセプトで選ばれたのでしょうか? その背景や思いを伺いたいです。
事前にギャラリーを拝見して、天井の高さや奥行きなどから、大きな作品を飾って、じっくりとお客様にご覧いただきたいと思いました。クラシックバレエの作品は大きさも木ニセコのギャラリーにはぴったりかと思い、入り口側の3点はすぐに決まりました。その他、夏に合いそうな小作品を4点選び、そして、以前から作りたかったスケートボードの図案を新作として仕上げ、今回の8作品が出揃いました。
作品には、クラシックバレエやサーフィン、スケートなど、動きやリズムを感じさせる題材が多い印象です。これらのモチーフを選ぶ際に大切にされていることはありますか?
昔からアールデコやアールヌーボーの作品が好きで、これまで多大な影響を受けてきました。それらに共通する好きな部分は不規則な要素と規則的な要素…「1/fゆらぎ」のようなものです。とにかく「ここちよさ」は作品を作る際に重要視しています。人の動きも突き詰めると、自然界にある心地良いリズムが生まれるような気がします。
一瞬の情景を切り取り、グラフィックとして再構築される際、どのようなプロセスでイメージを作品に変換していくのでしょうか?
①描きたいモチーフを定める ②モチーフについて調べる (実物を見たり、映像や写真を見たり) ③登場人物の下絵を描き、イラストレーターというソフトでデジタルイラストとして起こす ④世界観に合わせて、背景となるイラストを同様に起こす ⑤できたイラストを配置しながら、パターンを構築していく …と、ざっくりこんな感じで作ります。このシリーズはデジタル作品ということもあり、8〜9割は細かい作り込みと計算です。一番最後に色と配置を微調整して、一番気持ち良いパターンを模索します。
作品の色彩やパターンにおいて、特にインスピレーションを受けているものはありますか?
クラシックバレエのシリーズに関してはバレエ作品の決まった衣装や背景などがあったりするので、色彩はできるだけそこに合わせています。サーフィンの2作品に関してはシチュエーションが海なので、ベースとなる青を決めてから、他の色を置いています。スケートの作品は他とアプローチが違い、女の子の服の色から、全体と構築しています。パターンはインスピレーションというか、心地よい連続した流れができるように意識しています。
北海道壮瞥町のリンゴを使ったワインやシードルのラベルデザインにも取り組まれていますが、アート作品と商品デザインでは、創作にどのような違いや共通点がありますか?
私の作品はそもそも商業寄りなのかもしれません。出身もデザイン系で、商業イラストレーターを目指していた時期もあるので。仕事をより自分の作りたい方向に寄せること、妥協しないということを続けて、これまでの作品があります。アルフォンス・ミュシャなどが活躍していた時代にずっと憧れています。彼らはデザイナーであり、アーティストでした。強いて言うと、商品デザインには明確な納期と、誰かの目的があり、自分が妥協しないためには創作以外の技がたくさん必要かもしれません。
2020年から続くこのシリーズを振り返って、作風やご自身の中で変化した点があれば教えてください。
実はパターン作品のクラシックバレエの作品は「立体視」できるようになっています。コツは入りますが、絵が飛び出して見えます。最近のグラフィックはリズムとオリジナリティーを重視し過ぎて、立体視できないんですよね。「パキータ」と「ギュリナーラとランケデム」という作品は立体視しやすいので興味がある方はぜひトライしてみてください。
今回の展示を訪れるお客様には、どのような体験や感情を持ち帰っていただきたいですか?
細かい作品なので、じっくりと鑑賞していただき、この作品の「この人が好き」とか「この動きが好き」とか「このシーンが好き」とか、何かしら見つけてもらえたら嬉しいです。
これから挑戦してみたいテーマや表現があれば教えてください。
ここ数年、デジタル作品に寄っているので、少しアナログ回帰できたら良いなと思っております。
白鳥様にとって「アートをつくること」はどのような意味を持っていますか?
生きる上で、衣食住や命に携わることは必要とされやすいですよね。自分の作品が世の中に必要なのかはずっと自問自答しています。また、この歳になると、作品を作るよりも楽しいことはたくさんあります。家族との生活もあるので、昔に比べると作品を作るペースもずいぶんゆっくりになりました。それでも私は作品を作らないと自分自身の価値を見出せません。意味はいつか後から付いてくることを願っています。
展示期間:2025年8月1日~11月2日
場所:木ギャラリー / 入場無料(ホテル正面玄関からご入館いただけます)
どなたでも自由にご覧になれます。どうぞ、お気軽にお越しください。